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暖かい風も、漂う淡い薫りも
 ぴんとこないけれど。

そんな曖昧なものが集まって
 世界は作られているのだと君が笑う。

*

氷河氏にとって郷愁を誘う風景というのは、やはり東シベリア。
厳しい冬と春の雪解け、短い夏に映える針葉樹...といったところでしょうか。

少なくとも、日本の代表的な風景、
私たちが「あ〜なんかいいね〜」と思うような
桜や紅葉ではないのでしょうね〜。

満開の桜も彼にとっては
「...まぁ、綺麗だけどなぁ...」
程度のものなのかも。

「懐かしいな、とかないの?」

「懐かしいって、おまえ...
 俺が子供の頃に日本にいたのは
 たった数ヶ月だったろ...」

「そうだね...」       

なんて会話をしているのかな。

「子供の頃の日本で
 『懐かしい』風景って言ったら...」

と、記憶を辿るように彼方へ飛ばした視線を ふいに戻してにやりと笑い、

「誰かさんがぴぃぴぃ泣いている顔だ」

「ーーっ!」

なあんて、瞬氏をからかって遊んでいるかもしれません。

他愛のないことでじゃれ合う二人の間に、
桜の花びらと暖かい日射しが
いつまでも降り注いでいましたとさ。

ぽかぽか♪